男は運転中に突然、目が見えなくなった。男を助けて家まで送り届けた者も、男を診察した眼科医も同様に視力を失った。この原因不明の奇病はたちまち国じゅうに蔓延する。
対処に困った政府は視力を失った人々を隔離した。しかし医師も介助人もいない病室で、人々は理性を失い、獣と化していく。
評価=☆☆☆☆☆ (5点満点)
『ブラインドネス』というタイトルで映画化された作品。映画は見ていませんが、小説を読んでみて驚きました。小説に書かれたものを書かれた通り映像にしたら、映倫の審査を通らないんじゃないかなあ……。
それぐらい凄まじいものが描かれていますが、これは間違いなく人間の中に秘められた凄まじさなんだと思います。通常は理性で抑えられている。しかし状況が一変すれば抑えがききません。
その様子を筆者の目はカメラのようにじーっと細かいところまで見すえています。一つの段落が長いんですね。登場人物の言葉は「 」の中に入れず、地の文と区別することなく書き連ねられています。
目の見えない人々が隔離された病院へ、一人だけ目の見える者がもぐりこみます。
急に盲目になって治癒の可能性もみいだせない人々の絶望感もさることながら、組織の秩序を失って獣と化した人々の惨状を目で見ている者の絶望感も深いのです。
食事やトイレといった「個人的な事柄」と思えることが、実は組織の秩序に支えられていることがよくわかります。
ただし本書を読む時間帯にはくれぐれもご注意ください。昼休みなんかに気軽に読むと後悔するかもしれません……。
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