恩田陸【猫と針】 

喪服姿の30代後半と思しき男女5人が密室で語り合う心理サスペンス。

「演劇集団キャラメルボックス」のために恩田陸が初めて書き下ろした戯曲に、「『猫と針』日記」を加えて単行本化。


猫と針猫と針
(2008/02)
恩田 陸

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評価=☆☆☆☆  (5つ星が満点)


恩田陸の小説で最近よくみられる「密室座談会」形式には、わたし個人としてはやや食傷ぎみです。「じゃあ読まなきゃいいだろ」という話ですが、お芝居の地方公演は少ないし、せめて戯曲だけでも読めるなら読んでおいたほうがいいのではないかと考えたわけでした。



登場人物は、サトウ、タナカ、ヤマダ、スズキ、タカハシと、どこの地域の電話帳でも多くのページを割かれていると思われる名字ばかりです。しかもカタカナ表記。

どのセリフが誰なのか区別しにくい状態。それがある種の効果を上げていると思います。

人間どうしが話しているというより、5つの影がうごめいているような、いつの間にか影が6つ7つと増えているような、そして思わず自分の背後を振り返りたくなるような、恩田作品独特の薄気味悪さが漂います。

また、登場人物5人の居場所が読み始めの段階ではよく分からないんですね。彼らが喪服を着ていることから、読み手の想像は自然とふくらみますが、そこにちょっとした罠があります。

戯曲でありながら小説的な楽しみ方ができますね。

お芝居でも、おそらく舞台装置はシンプルで一見しただけでは場所の見当がつかないでしょうから、観客の予想をみごとに裏切ってくれるのかもしれません。



でもこの結末はどうだろう……。小説だったら賛否両論あるでしょう。私は一味たりないと思う。

ただし、お芝居では余韻を残した結末になりそうで、うーん、やはり劇場で見たかったなあ。DVDは出ませんかね?



「『猫と針』日記」では、初の戯曲に挑む恩田さんの並々ならぬ苦労がしのばれます。

公演は8月22日から始まるのに脱稿は8月15日という凄まじさ。書くほうも大変でしょうが、演じるほうも心身ともにタフじゃないと務まりませんね。



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[2008/04/14 16:07] 恩田陸 | TB(4) | CM(0)

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