15歳の楠本千織は、各地の孤児院や老人ホームなどを慰問してまわるピアノ奏者。
知的障害のある千織をサポートする如月敬輔(きさらぎ・けいすけ)は、ピアニストの将来を嘱望されながら、ある事件をきっかけに道を断たれた過去を持つ。
二人が山奥の診療所を訪れ、不思議な出来事に遭遇する四日間を描くファンタジー。
2002年の第1回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作。吉岡秀隆と石田ゆり子の出演で映画化。
評価=☆☆☆ (5つ星が最高点です)
「四日間」とはいえ含まれる情報量は膨大ですね。幼いころからピアノ漬けだった敬輔の生い立ちや、千織との出会い、ピアニストの道をあきらめた事情が、回想のかたちで事細かに描かれます。
千織に知的障害があるということで、脳に関する医学的な話は避けて通れないし、二人が訪れる「山奥の診療所」が設立された事情も、やや込み入っています。
診療所に勤務する岩村真理子という女性が、千織や敬輔と深く関わることになりますが、彼女の生い立ちもストーリーに絡み、最終的には「なぜ人は生きるのか」「人生の意味とは……」みたいな哲学的なところにまで話が及んで、読後には並々ならぬ満腹感がありました。
たとえて言えば、五目御飯をぎっちり詰めた稲荷ずし四つ食べちゃった、というところでしょうか。
味はすごくいいと思いますよ。なんといっても完食したわけですから。
いっぱい張ってある伏線がちゃんと片づけられていくし、小難しげな話もきちんと読めば意味がわかる。きっとラストで感涙にむせぶ読者は多いのでしょう。
ただ私としては、書かれた言葉の外側に漂う空気みたいなものを味わいたいので、ときどき本から目を離してボーッと思いをめぐらせる余裕があれば……と思わないこともない。(私の脳みそが膨大な情報量を処理しきれないというだけの問題かもしれません)
まあ作品の出来とは別次元の話ですけど。
さらに別次元ついでに言えば、かつて私の身内にも病院で長く療養した者がおり、そういう現実を見たことで、この手のファンタジーについては深く感情移入せずクールに読む傾向が、私の中にあるようです。
(逆に、似た経験があるからこそ本書に感情移入する人もいるでしょう。読み手によってそれぞれだと思います)
もうひとつ言っちゃうと、この本、あんまりミステリーっぽくないけど「このミス」大賞なんですね。
私自身はジャンルに関係なく面白い本が読めれば幸せな人間なので構いませんが、栄えある第1回の「このミス」大賞ですものね。審査員の意見が割れたりしなかったのかなあ……。
そう思いながら巻末の解説に再び目を通してみると、「あまりミステリー的ではないが作品の素晴らしさに打たれた」という意味のことが書いてありました。ふむ。なるほど。
本書は映画化されて吉岡秀隆が主演したとのことですが、私は見ておりません。
しかし本書を読んでいる最中に、たまたまテレビに映っていた国分太一を見たら、脳内で主人公の顔がすべて国分太一に変換されてしまいました……。
妄想読書人の「ながら読書」は因果なものでございます。

そうですね。私にももう少しピアノの心得があれば……あるいはクラシック音楽に通じていれば、もっと作品世界を深く楽しめたかなあと思います。しかし読み応えのある作品ではありますので、気が向いたときに読んでみてください。
[2008/02/21 10:12]
ぱんどら
[
編集 ]
「なぜ人は生きるのか」「人生の意味とは……」みたいな哲学的なところにまで話が及んで、読後には並々ならぬ満腹感がありました。
というところに惹かれました。ピアノに絡むところも。
機会があったら読んでみたいと思います。
コメントの投稿