押村悟郎は10年以上も音信不通だった姉の千賀子と再会した。放火事件で重傷を負った千賀子は、病院の集中治療室でコードやチューブにつながれ、意識がない。
きのう入籍をすませたばかりの千賀子の夫とは連絡がとれない。
不審に思った悟郎は千賀子の家を訪ね、姉との10年間の空白を埋めるべく調査を開始した。
10年以上も会っていなかったわりに、押村悟郎が何かにつけて
「それが姉の生き方だ。僕にはわかる」と、えらく確信的に口走るのが気になりました。そんなに「わかる」のなら自分で調査なんてしなくていいと思うんです。警察も動いてることですし。
悟郎は自分の確信を裏づける根拠が欲しいのかな。
千賀子は生き方が不器用な女性として描かれてます。何が何でも自分の考えを押し通そうとする性格で、かなり損をしている。気っぷのいい姐御肌とみて慕う人もいるんですけど。
こうと思い込んだら暴力に訴えることも辞さない。ひとりで重荷を背負い込む。とにかく過剰なほどに激しい人です。
たしかに心根は優しい人だと私も思うけど……やりかたが乱暴なので、これでは周囲の人たちに理解しろと言うほうが無理。
でも「理解してくれなんて頼んだ覚えはねーよ」とか言っちゃいそうな、痛い人なんです、千賀子って。
そんな姉に対する悟郎の気持ちは、「複雑な家庭環境のせいで、姉への想いが人より強い」と解釈できそうですが、それだけでは説明のつかない過剰なものが、悟郎の言動のはしばしに見てとれる。
悟郎にとって「正しい人間」はこの世で姉の千賀子ひとりだけ。養父母に感謝はするが、ちょっとした言葉じりを捉えて心の中で非難する。警察の人間は一見「正義の味方」だが、一皮むけば悪いやつばっかりだ。
悟郎の人間観はあまりにも極端であるように思います。
微妙な違和感をおぼえつつ最後の最後まで読み進んでいったところで、どーんと答えが明かされます。
う〜ん。そう来たか……。
最後の最後に弟がとった行動も、あれでよかったのかどうかよく分かりませんが、なにせ「最愛の姉」ですから……まぁ心情は理解できなくもない。
「10年も連絡をとりあわなかった姉と弟」という設定が巧みですね。弟が知らないことは読者が知らないことでもあるわけで、過剰な連中ばっかり出てくるなあと思いながらも、知らないことを知りたくて、ページをめくる手が止まりませんでした。
ただ、あのラストシーンにもっていきたいがために、ずいぶん計算して書かれているのかな……という感もあり、私は感動に胸がふるえるところまではいきませんでした。
小説を書くのに「計算」はあって当然ですが、計算のにおいが強すぎると感動を損ねますね。
映像化したら面白いんじゃないかなぁとは思います。計算のにおいをかぐ間もなく作品にどっぷり浸れそうですから。
WOWOWのドラマによさそう。
心根は優しいけれど「痛い」姉、「千賀子」には、土屋アンナを妄想キャスティング。

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映画な日々。読書な日々。