小説もピンからキリまであるが、ピンの小説を読んでる人は、そんなもの放り出してしまいなさい。これはスケールの壮大さといい、世界観の深さといい、へたな小説を遥かに凌駕する漫画である。
ある猟奇的な事件に遭遇して以来、7年のあいだ眠りつづける少女「十条青羽(じゅうじょう・あおば)」。
夢先案内人の「渡会時夫(わたらい・ときお)」は、ある筋から依頼を受けて青羽の夢に入った。他人の夢に入って深層心理をさぐり、事件の動機などを解明するのが時夫の仕事である。
青羽の夢の中には「バルバラ」という世界が広がっていた。時夫は、少女の夢とは思えぬ世界の精緻さに驚く一方、いちど足を踏み入れたら二度と出たくなくなりそうな居心地の良さをおぼえる。
そのころ時夫の一人息子「キリヤ」は、青羽とは面識がないにも関わらず、たびたび夢の中で青羽に出会う。しかもキリヤは「バルバラ」を知っているようだ。だが時夫はキリヤとの関係がギクシャクしているせいで、深く問いただすこともできず、困惑する。
猟奇的な事件の裏に隠された十条家の秘密。「バルバラ」とは何なのか。そしてキリヤと時夫との親子関係は修復されるのか……。
個別の問題は様々あって、読み進むごとに明らかになるが、それらを超越し全てを呑み込んでしまうかのようなラストが圧倒的。
そのくせ奇妙な親近感があるんだな。
子供のころの私が、何の根拠もなく、漠然と考えていたこと――
「いま私が見ている世界は、本体の私が見ている夢かもしれない」
「いつか私は夢から覚めるのかもしれない」
それが漫画になって蘇ったような気がして、衝撃的な内容ながら不思議と嫌悪感はなかった。
ところで、これを読んでから二晩ぐらい、夢をたくさん見た。そして今では連絡も取らないし滅多に思い出しもしない人たちが、夢の中に出てきた。
嫌悪感はないものの、深層心理には多少の影響があるのかもしれない。
こんな漫画は他にはない。
トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://pandoranikki.blog69.fc2.com/tb.php/199-d2b725fa
バルバラ異界 / 萩尾 望都
第27回日本SF大賞受賞作。漫画の受賞は大友克洋の「童夢」以来の快挙らしいですよ。そう…そういえば、私のSFの原体験は、漫画だったんだよなあ。バルバラ異界 (1)萩尾 望都 Ama
[2007/02/20 08:45]
URL
GOKURAKU Days