夏目房之介【漱石の孫】 

このまえブログに書いた鳥越碧【漱石の妻】は、著者が漱石や妻のことを綿密に取材して書いた小説である。

いっぽう【漱石の孫】は、本物の夏目漱石の孫が「漱石コンプレックス」との戦いをつづったエッセイ。



私は『BSマンガ夜話』という番組を見て、初めて夏目房之介という名のマンガ評論家を知った。

この人が夏目漱石の孫であることを知ったのは、もっと後のことである。

「夏目房之介」はペンネームだと思っていた。

それに夏目漱石ってあまりにもビッグな存在で、「お札になった人」とか、「教科書に載ってる人」ぐらいの認識しかない。漱石が妻をもったり子供をもったりする生身の人間であったことを忘れかけていた。



「夏目房之介」は本名である。

漱石には鏡子という妻と7人の子供がいた。長男の純一は音楽家になり、結婚して房之介が生まれた。

漱石は1916年に亡くなり、房之介は1950年に生まれたから、孫とはいえ漱石との直接の交流はまったくない。



しかし世間は「あの文豪の孫!」という目で房之介を見る。

それも無理はないと思うけど、ご本人にとっては、学校の先生から変にひいきされたり、漱石が千円札になったら孫には特に大きな感慨もないのにマスコミの取材を受けたりと、鬱陶しいことが多かったらしい。

ならばマンガ家デビューするときに、「夏目」のつかないペンネームを使えばいいんじゃないか……と私は思うけど、そこで夏目房之介氏は逆に「ぜってぇペンネーム使わねーぞ。意地でも本名で押し通すぞ!」と思ってしまったのだな。

偉大な野球選手の息子なんてのも生きづらそうな気がするが、夏目漱石の孫も何かと大変なのだ。



こういう本を「面白かった」と軽く言っちゃうのも恐縮だけど、読者にとって興味ぶかい記述が多々あるのは事実。

幸いなことに房之介氏の「漱石コンプレックス」は沈静化の方向にあるようで、私も読んでいてホッとした。



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[2006/09/04 16:58] な行の作家 | TB(0) | CM(0)

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