映画がきっかけで友達ができる。恋が始まる。人生が変わる。ちょっと大人になる。幸せになる。そんな人々の姿を描いた中篇5作を収載。
世間では人気の作家さんと知りつつも私とは相性がよくないようで、しばらく敬遠していましたが、本書の評判を聞いて久しぶりに読む気になりました。
結論から言うと、これはなかなか良いです。
本書に収載されているのは以下の5作。私は映画を人並み程度にしか観ない人間ですが、これらが映画に関わる話であることは分かります。しかも完全に独立分離した話ではなくて、どこかで微妙にリンクし合っています。
「太陽がいっぱい」
「ドラゴン怒りの鉄拳」
「恋のためらい/フランキーとジョニー もしくは トゥルー・ロマンス」
「ペイルライダー」
「愛の泉」
私は「愛の泉」が好きです。笑える話ですけど、ちょっと泣きそうになる場面もありました。「太陽がいっぱい」もいいですね。
中間の3作では大企業の不正に絡む重大事件が背後に潜み、なかなか奥行きの深い話になってますが……うーん、そこまで話を深くする必要があるのかどうか。
話が深い割りには、結末でもう一ひねり、いや半ひねりぐらい足りないかな。表現がステレオタイプで登場人物の情緒が伝わりにくい気もするし……。
作品全体のトーンをもう少しそろえたほうがいいんじゃないかとか、女性の化粧品の話を男性が書くとあんまりサマにならないだろうとか、ロクでもないことを考えましたけど。
ラストの「愛の泉」が本当に良くて、なんかもう細かいことは一掃されちゃいましたね。
ものすごく映画好きで古今東西の作品を数多く観ている人は、いっそう深い楽しみかたができるし、それなりの映画好きにも充分に面白い本だといます。
でも『ローマの休日』さえ知らない人では厳しいな。有名すぎるほど有名な映画なので、そういう人が本当にいるかどうか分からないけど。『ローマの休日』のタイトルぐらいは皆さんご存じでしょう?
