金城一紀【映画篇】 

映画がきっかけで友達ができる。恋が始まる。人生が変わる。ちょっと大人になる。幸せになる。そんな人々の姿を描いた中篇5作を収載。


映画篇映画篇
(2007/07)
金城 一紀

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世間では人気の作家さんと知りつつも私とは相性がよくないようで、しばらく敬遠していましたが、本書の評判を聞いて久しぶりに読む気になりました。

結論から言うと、これはなかなか良いです。



本書に収載されているのは以下の5作。私は映画を人並み程度にしか観ない人間ですが、これらが映画に関わる話であることは分かります。しかも完全に独立分離した話ではなくて、どこかで微妙にリンクし合っています。

「太陽がいっぱい」
「ドラゴン怒りの鉄拳」
「恋のためらい/フランキーとジョニー もしくは トゥルー・ロマンス」
「ペイルライダー」
「愛の泉」

私は「愛の泉」が好きです。笑える話ですけど、ちょっと泣きそうになる場面もありました。「太陽がいっぱい」もいいですね。

中間の3作では大企業の不正に絡む重大事件が背後に潜み、なかなか奥行きの深い話になってますが……うーん、そこまで話を深くする必要があるのかどうか。

話が深い割りには、結末でもう一ひねり、いや半ひねりぐらい足りないかな。表現がステレオタイプで登場人物の情緒が伝わりにくい気もするし……。

作品全体のトーンをもう少しそろえたほうがいいんじゃないかとか、女性の化粧品の話を男性が書くとあんまりサマにならないだろうとか、ロクでもないことを考えましたけど。

ラストの「愛の泉」が本当に良くて、なんかもう細かいことは一掃されちゃいましたね。



ものすごく映画好きで古今東西の作品を数多く観ている人は、いっそう深い楽しみかたができるし、それなりの映画好きにも充分に面白い本だといます。

でも『ローマの休日』さえ知らない人では厳しいな。有名すぎるほど有名な映画なので、そういう人が本当にいるかどうか分からないけど。『ローマの休日』のタイトルぐらいは皆さんご存じでしょう?


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(2003/12/17)


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[2007/09/12 13:20] 金城一紀 | TB(13) | CM(0)

金城一紀【SPEED】 

作家が、どんなふうにして小説を書くのか。そこにすごく興味がある。

たとえば宮部みゆきの場合は


言葉がおりてくる


のだそうだ。その言葉を次々とワープロ(今はパソコンか)に打ち込んでいき、やがて小説が完成する――といったことを何かの本で読んだ記憶がある。

言葉がおりてくるとは言わないまでも、とにかくパソコンに(あるいは原稿用紙に)向かって何か書いてみて、構成などはあまり深く考えず、ラストシーンさえ見えないまま、頭に浮かんだ言葉をつないでいくタイプの作家は、とくに女性に多いような気がする。

参考文献はこちら。宮部みゆきは出てこないが、恩田陸、角田光代など人気の女性作家たちが登場する興味深い一冊。




【執筆前夜】新風舎 1575円
執筆前夜






いっぽう金城一紀は、まず頭の中で書きたいものを


映像化


して、それから書き始めるのだそうだ。

金城一紀の著作に映画化・漫画化されたものが多いのも、うなずける気がする。



この本の最初の場面は、私の好きなブラッド・ピットが出演した映画『ファイトクラブ』のオープニングに似ている。

高校生の「佳奈子」が悪いやつに捕まって、黒光りする武器を向けられている。

なぜこんなことになっちゃったのか、教えてあげよう、というわけで物語が始まる。



佳奈子の家庭教師をしていた女性が死んだ。自殺とされたが、佳奈子は納得しない。殺されたのかもしれない、と思う。

そこで、一人で調査を始める。この女性は佳奈子にとって≪憧れの存在≫だったし、≪約束≫もあったし、≪約束を守らずに姿を消すような人とは思えない≫。だから、あえて自分から危険に飛び込むわけだ。

学校では先生がうるさいし、校則が厳しいし、友達にもシカトされて、こんな毎日は面白くないから思いきって≪冒険≫しちゃおう、という気持ちもある。



高校生の女の子が一人で冒険する。それは「絵」としては面白い。

だけど、女の子の心情はさっぱりわからない。たとえば私だったら、≪憧れの女性≫が死んだら、まず泣き崩れ、それからしばらく落ち込む。自殺と聞けば、その動機を推察することぐらいはするだろうが、「殺しかも……」なんて考えるかどうか。

まぁ泣きの場面はなくても小説は成立するが、明確な根拠もなしに「殺されたかもしれない」なんて遺族が聞いたら、佳奈子ちゃん、あんた、ぶっ飛ばされるよ。



でも、誰かが疑問を持って調査をしなければ小説が始まらないから、まぁ大目に見よう。

しかし調査といっても高校生の女の子がやることには限界がある。状況判断は甘いし、腕力もなければ武術の心得もない。悪いやつに後ろから羽交い絞めにでもされたら、どうしようもない。

そこで正義の味方が登場する。



助けを求める女の子と、悪をけちらす正義の味方。とてもわかりやすい「絵」だが、奥ゆきというか陰影というか、そんなものが足りない気がする。



まぁいろいろ書いたけど、要は「ぱんどらの好みに合わなかった」というだけの話。

スカッとさわやかなアクション小説ではあるから、読みたい人は気にしないでガンガン読んじゃってね。





金城一紀【SPEED】
角川書店 1155円
SPEED



[2006/06/01 09:27] 金城一紀 | TB(8) | CM(6)