「祝 直木賞受賞!」という帯文が華々しい。
直木賞の選考に大きな影響力を持つ(と思われる)文藝春秋が、三浦しをんの本にこういう帯文をつけるのなら、まだわかる。
しかし、【人生激場】は新潮文庫である。
新潮社にも「三島由紀夫賞」があるが、いまひとつ話題性に乏しい。直木賞・芥川賞ならNHKの夜7時のニュースでさえ取り上げるが、三島賞については「み」の字も言わない。
また、新潮社から出た伊坂幸太郎の
【重力ピエロ】は、直木賞候補に挙げられながらも受賞は逃した。
新潮文庫版の【重力ピエロ】では、帯文に「読書界を圧倒した記念碑的名作」とある。
「読書界」って何だ? 「文壇」は圧倒しないのか? 直木賞は取れなかったから、「文壇を圧倒した」とは書けないのか?
仮に、新潮社の編集部の人や、一般の読者を「読書界」の人々としよう。
「読書界を圧倒した記念碑的名作」という帯文は、「読書界は圧倒したけれども、文壇のお偉い先生方を圧倒できなかったから直木賞が取れなかったんだよチクショウ」というような、新潮社の自虐ネタなんだろうか?
三浦しをんと森絵都が(文藝春秋の後押しで?)直木賞を取ったとき、伊坂幸太郎の【砂漠】は候補に挙げられていた。
【砂漠】をどこの出版社が文庫化するのか知らないが、新潮文庫だったら、どんな自虐的な帯文をつけるのか、ある意味、楽しみである。(意地悪だねぇ私も)
……ぱんどらさん前置き長すぎだよ。いいかげん本題に入れよ!
はい。すみません。でも、【人生激場】ってエッセイだからさ。
すっごく面白いと書いちゃったら、そこで話が終わっちゃうわけよ。
でも、なんかプロの作家(しかも直木賞受賞者)らしからぬ面白さだね。このぐらいだったら、素人のブログでも書けるんじゃないかな。
直木賞受賞作の【まほろ駅前多田便利軒】は、ちょっと少女マンガ的な雰囲気もあるけれど、小説として楽しめた。しかし「面白い」と評判の素人ブロガーが小説を書けるかどうかは、また別の話だ。
三浦しをんという人は、小説を書くときと、こういうエッセイを書くときとでは、別々の思考回路を持っているのではなかろうか? しかも「エッセイ回路」のときの三浦しをんは、「私は人気作家なのよ♪」という自覚が薄いようだ。
そんな素人っぽさが「ウケている」と言えば、そうかもしれないが、「直木賞受賞者」という前提があると、「んー。これが直木賞作家かい。こんな素人っぽいモンでいいんかい」と軽い疑念をおぼえる。
疑念をおぼえはするが、読んでいる途中で何度も笑ってしまって、「こんな直木賞作家がいてもいいか」という気分になってしまう。
この本を電車の中で読む皆さんは、つい笑いがこぼれてしまって変人と思われたりせぬように、くれぐれも注意していただきたい。
まんまとポプラ社に嵌められた。
三浦しをんと森絵都が直木賞を受賞したのは7月13日のこと。
そして7月16日の新聞に、三浦しをんのエッセイ集【三四郎はそれから門を出た】の広告がドーンと出たのである。
なんかもう読まずにはいられない気分になって、書店に走ったが、ない。翌日になってからアマゾンや楽天ブックスを検索したが、すでに在庫はなく、ビーケーワンにたどりついて、ようやく手に入れたのであった。
恐るべし、直木賞作家。そして「踊らされてる読者」がここに一人……。
しかし三浦しをんという人は面白いね。
本書68ページ。
《映画『トロイ』を観て、「男性の太ももっていいわね」と思ったので、太ももが露出している時代を題材にした小説を読んでみることにした。》
私もブラッド・ピットが大好きで、オーランド・ブルームが好きな友人と連れだって『トロイ』を見にいった。その記憶をたどれば、たしかに男の太ももは丸出しであった。太ももどころか、ブラッド・ピットのお尻まで拝める貴重な作品であった。
三浦しをんが太ももフェチなのかどうか私は知らないが、もしかしたら本当は太ももよりお尻のほうに心ひかれたのではあるまいか。(いや、ブラッドなんて好きじゃない、と言われればそれまでだが)
太ももの話から始まる三浦しをんのエッセイは、もともと朝日新聞の「中高生のためのブックサーフィン」という欄に掲載されたものだ。
中高生むきということで、「太もも」で踏みとどまったのかも……なんて深読みしてみたりして。
表現の強弱こそあれ、とにかく三浦しをんは自分の中のエロエロ心を隠さない人である。
『ゲド戦記』に出てくる金髪の魔法使いにいろいろと想像をめぐらせ、「過去の大悲恋物語を、三日三晩かけて勝手に捏造してウハウハしました」という。
この人が「捏造」した大悲恋物語って、かなり面白そうだ。そりゃ書いた本人もウハウハするだろ。
しかし妄想読書人ぱんどらとしては、かなり共感を覚える。
読書ブロガー(とくに女性)のあいだでは、三浦しをんは直木賞受賞前から人気の高い作家である。そう。私が知らなかっただけ。これからいろいろ読んでみます、はい。
私と同じく、直木賞受賞前後から三浦しをんに興味を持ちはじめた皆さんにはお勧めのエッセイ集。
三浦しをんの人となりもわかるし、三浦しをんが読んだ本についてもわかる。
このエッセイ集を読むときは、筆記用具を用意しておいて、興味を引かれた本は片っ端からメモしましょう。
私はこの本を読んで、宮藤官九郎のエッセイ集を速攻で注文した。メモするのももどかしかったので、携帯電話でAmazonモバイルにアクセスしたのである。
あと、上條淳士の【SEX】ね。
2巻まで刊行された後、長らく凍結状態にあったと聞いたが、いつのまにか全7巻で完結したらしい。
買わねば。
これはもう妄想読書人ぱんどらのためにあるような小説。脳内DVDぐるんぐるん。
なんでも請け負う「便利屋さん」の話。「便利軒」だからといってラーメン屋ではない。探偵とは違うので、ものすごい大事件は起こらない。
便利屋稼業のなかで起こる様々な出来事を通して、孤独な男2人が自分の心を見つめなおす物語。
こう書くとシリアスな話のようだけど、重苦しくはない。むしろ会話の軽妙さに爆笑。
もし映像化されるなら連続ドラマがいいなぁ。フジテレビの木曜夜10時のワクでやってくれないかしら。
番宣は木曜9時『とんねるずのみなさんのおかげでした』の「食わず嫌い選手権」。役者2人が出てさ、石橋貴明が「まほろ駅前多田便利軒、このあとすぐ!」と締めるところまで妄想したね。
で、妄想した役者さんはこちら。
便利屋の「多田啓介」に、椎名桔平。

多田の高校の同級生で、ちょっと風変わりな「行天晴彦」には、北村一輝。
