三島由紀夫の小説を読むと、主人公を
張り倒したくなる。自意識過剰もいいかげんにしろ、と言いたい。
だから好き嫌いで言えば、三島の本は「嫌い」のほうに分類されるが、世間には「三島由紀夫賞」という文学賞があるくらいで、つまりは歴史に残る文豪である。
本好きと称してブログをやっている人間としては、三島くらい読んでおかないとカッコつかないかな、と思うのである。
そんなわけで、嫌いだ嫌いだと言いながら、けっこう三島を読んでいる。【宴のあと】とか、【春の雪】とか、【青の時代】とか、【金閣寺】とか。
面白いことは面白いが……やっぱり張り倒したくなった。
【三島由紀夫レター教室】は、自意識過剰ものの作品群とは全然ちがう。
登場人物を張り倒したいと思うこともなく、穏やかに笑って読める。
しかしタイトルの「レター教室」という文字を見ただけで
「文豪に手紙の書き方を学ぼう」などと考えてはいけない。なんつったって三島である。
5人の登場人物が書く、あらゆる種類の手紙を読んでいくと、そこにはちゃんとストーリーがあり、いかにも三島的な底意地の悪い心理分析がある。笑いの奥に毒がある。
一見、実直で純朴な銀行員の手紙でも、三島に言わせれば、「凡人臭がプンプンする」とか、「こんな男はエディプス・コンプレックスの持ち主に違いない」とか、「甘ったれ」とか、ボロクソだ。
手紙のお手本としては全く役に立たないが、それでも「この表現は真似してみたい」と思う表現もある。
私なんかは他人の影響を受けやすいほうだから、
恋愛というものは「若さ」と「バカさ」をあわせもった年齢の特技と書いてあると、「ふーん、若さとバカさね。韻を踏んでて面白い」なんて思って、さも自分で思いついた表現であるかのように、なにくわぬ顔で使ってしまうのである。
「ライブドア・ショックで、いま、話題沸騰!!」
「よく似た男がいた!」
と、新潮社さんが派手派手しいキャッチコピーで売り出した一冊。
三島由紀夫が昭和25年に発表した作品。「光クラブ事件」という現実の出来事で逮捕された人物がモデルだそうだ。
光クラブとは高利貸しのヤミ金融。ここの社長が東大の学生で、逮捕された後、事業が急速に傾き、青酸カリを飲んで自殺した。世間の話題を集めた「あの人」に似ているような、似ていないような。
そんなヤジウマ的な興味もあったし、「青の時代」というタイトルがカッコいいので、読んでみた。
結論から言うと、
似てない。例の「あの人」とは、ぜんぜん違う。
主人公の「川崎誠」は、地方の名家に生まれたお坊ちゃまで、小さい頃から自意識過剰。そして医者である父親に反感を抱いている。
お勉強はよくできる子で、親の期待どおり東大に進学した。
東大生になった誠ぼっちゃまは、親の目のないところで好き勝手なことをやりはじめる。女にそそのかされて株に投資したりとかね。それで失敗して、損失を埋めようとして、今度は詐欺にひっかかる。
腹を立てた誠は、「自分で会社を起こして金を稼ごう」と考えた。
会社はどんどん大きくなって、従業員を何人も抱えるようになるが……秘書や友人に裏切られた誠の行く末はいかに!?
――という話だが、誠ぼっちゃまがあまりにもアホで……
これから起業したい人が「この本を参考に」などとは思わないほうがいい。
まぁ興味のあるかたは、「三島ってこんな本も書いてるのかぁ」という程度に、気軽に読んでみていただきたい。