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第20回柴田錬三郎賞受賞作。 お家には楽しいことがいっぱいある。インターネットオークションか、料理か、ロハスか、それともインテリアに凝ってみるか。 なにがあっても自分の家が一番。お家ばんざい。 すーっと流れよく読める、「家庭」をテーマとした連作短編集。ほどほどに笑いがあります。あんまり深く考え込まなければ、それなりに楽しめる作品だと思います。 以上。 「おいおい! それで終わりかよ!」とお思いのかたは以下をお読みくださいまし。 普通の家庭生活って穏やかで、ドラマみたいな激しい出来事は滅多にありません。クライマックスもなければオチもない日々が淡々と続きます。その中で人はそれぞれに小さな幸せを見つけながら、現実と折り合っていくものです。 【サウスバウンド】のように西表島に移住なんてそうそう簡単にできないし、 【町長選挙】の伊良部医師みたいな人が現実に存在してもちょっと困ります。とはいえ、そういう非現実的な話の中に、現実に生きる我々の心に響くものがあるから、「面白い」と言えるのでしょう。 それに非現実的な話だと、キャラクターと読者との間に距離があるから、読者は自分自身を直視しなくて済んで気楽なんですよね。 ところで「小説とは何ぞや」なんてことを柄にもなく考えてみると、たとえば文学賞の選考委員の先生が「この作品は人間を書けてない」などとおっしゃることがありますが、その言葉をお借りして「人間」を書くものが小説だとすれば、淡々とした家庭生活も「人間」の一面です。激しいドラマばかりが人間を書く方法ではない。 だから本書も、小説の在り方のひとつではあるだろうなとヘタな素人考えで理解をするわけですが…… 人間、30歳をすぎると既婚者も独り者もそれぞれに虚しさや寂しさや侘しさを抱えているのが現実で、それを紛らわすためにネットオークションやらロハスやらに走るのだと思います。 この手の小説を読むと、まるで鏡の中の自分を見ているような、あるいは心の中の侘しさを見透かされたような気がして、どうにも落ちつきません。 
治療をせずに治療する神経科医の伊良部一郎は名医か、はたまたヤブ医者か。 日本一の発行部数を誇る新聞社の会長からIT界の風雲児まで、有名人がこぞって伊良部総合病院神経科を訪れる。 【イン・ザ・プール】、 【空中ブランコ】に続く伊良部医師シリーズ第3弾。 『オーナー』、『アンポンマン』、『カリスマ稼業』、『町長選挙』の4篇を収録。 最初の2篇、『オーナー』と『アンポンマン』は素材のナマくささに失笑しました。Gという球団を持つY新聞社のW氏と、IT界で一躍脚光を浴び一夜にして失脚したL社の創業者H氏を、いやでも妄想せずにはいられません。 あの一連の騒動の果てにプロ野球チームが仙台に誕生したかと思うと、宮城県民の私にとっては感慨深いものがあります。2007年のシーズンは最下位を脱して4位となりました。うううっ……(感涙にむせぶ)。 ちなみに伊良部医師は、私の妄想キャスティングでは 南海キャンディーズの山ちゃんを抜擢しました。 実際にW氏とH氏が神経科を訪れるべき状況にあったとは思えませんが、本書に登場する「ナベマン」こと田辺満雄と、「アンポンマン」こと安保貴明は、秘書に勧められて伊良部のもとを訪れます。 しかし伊良部は治療らしい治療をしない。前作の【イン・ザ・プール】と【空中ブランコ】では、患者が伊良部の好き勝手な行動を見ているうちに自分を受け入れ、「このままでいいや」と開き直ります。 悩める患者たちの姿は滑稽とも見え、伊良部の強力なキャラクターとともに笑いを誘いつつ、どこか哀愁が漂い、そのくせ読後感のいい2作品でありました。 本書でも伊良部の態度は相変わらずですが、患者のモデルと思しき人物の印象が強烈。伊良部のキャラクターや患者への共感よりも、現実の出来事に寄りかかった面白さです。 『オーナー』、『アンポンマン』ときて、3篇め『カリスマ稼業』では、寄る年波に必死の抵抗をつづけてカリスマの地位を守る女優が登場します。 女優は夢を売る商売だから、若さを失っていく自分を「このままでいいや」と簡単に受け入れるわけにはいきません。かといって若作りのしすぎも滑稽です。もっと年齢を重ねれば諦めがつくかもしれないし、今すぐカリスマの地位を捨てれば話は早い。では彼女はどういう道をとるのか。 それって神経科医の域に属する問題かなぁ……という疑問はありつつも、同じ女性として身につまされる話でした。 『町長選挙』では、ある島の診療所に赴任した伊良部が、島を二分するほどの選挙騒動に巻き込まれます。 プロ野球騒動とかインターネットとテレビの融合がどうのこうのとか華やかな芸能界とか、そんなものから遠く隔てられた離島では、東京の価値観が通じません。 東京都庁から出向で町役場にやってきた職員は価値観の違いに悩まされ、診療所を訪れます。そもそも選挙で不正がまかりとおる島の体質が病んでいるとも言えますが、それは一介の神経科医の手には余る問題でしょう。 もちろん伊良部はどこへ行っても自分の価値観でしか行動しないので、まったく悩みはないものの、島の騒動は伊良部のせいでこじれていくばかり。さてどうなることやら……というお話。 伊良部医師シリーズも第3弾。同じような患者ばかり登場させては飽きられるわけで、本書ではスケールアップをはかったと言えます。 しかし問題が大きくなればなるほど伊良部との関わりが薄れていくようで、そろそろこのシリーズも打ち止めかなぁと思わずにはいられません。 
奥田英朗の 【真夜中のマーチ】を読んだとき、【空中ブランコ】の主人公の「伊良部医師」がお見合いパーティーの場面でゲスト的に出てくると面白そうだと思った。そして 【真夜中のマーチ】の妄想キャスティング案では、「伊良部医師」に南海キャンディーズの山ちゃんを配した。  【空中ブランコ】を読んでいる最中は、 伊良部医師=山ちゃん のイメージが脳内に定着し、まったく揺るぎないものとなっていた。ああ私は妄想の奴隷。 皆さんも、山ちゃんが白衣を着て、 「いらっしゃ〜い」「さ、注射を打とうか」なんて言ってるところを想像してみてくださいな。 あなたも完全に妄想の奴隷よ♪ ドラマでは阿部寛が演じたんだっけ? 「原作と違うじゃないか!」と批判するのは簡単だけど、デブキャラ探しって本当〜〜〜〜〜〜に大変なのよ。 小説では、伊良部医師は山ちゃん以上にデップリした人なのね。小説にに忠実であろうとすると、力士でも連れてこなければ無理だが、演技力はどうかという問題がある。 いっぽうドラマでナースの「マユミちゃん」を演じたのは釈由美子で、これは文句なくハマリ役。あえて妄想キャスティングするのは難しい。ただ巨乳グラビアアイドルを連れてくりゃいいってものではない。マユミは露出狂ぎみで無愛想な女である。難しいでしょ? さて妄想キャスティングの話はともかく、本の内容について。 伊良部は父親の病院である「伊良部総合病院」で、最初は小児科を担当したが、患者の子供たちを相手に本気でケンカをして親からクレームが殺到。やむなく神経科へ回された。 奥田英朗ワールド最強のキャラクターである伊良部の変人ぶりには、笑いがこみあげて仕方ない。 だが神経科を訪ねる患者にとっては、伊良部の精神年齢の低さが、自分の思い込みを捨てるきっかけとなる。 たとえばサーカスで失敗を重ねる空中ブランコ乗りの「山下」という男。自分の失敗を若手のせいにするが、伊良部の自由奔放な行動を見ているうちに、若手との間に自らミゾを掘っていたことに気づく。 山下は若手とコミュニケーションを取ろうと懸命で、「 みんな、彼女とかはいるの? おれたちが若い頃は、行く先々にコレがいたもんさ」と小指を立ててみせる。若手はみんなドン引きである。 これを読む平成の若者たちは「きゃーっはっはっは! 昭和くせー!」などと言うのだろうか。 さすがに私も「コレ」で小指など立てられると肌が粟立つ思いだが、山下に悪気はないのだ。ただ真面目すぎて周囲が見えず、時代の変化に気づいてないだけなんだよね。 なにせ私も昭和の人間。時代の変化にはついていってるつもりだが、自分でも気づかないうちに「昭和臭」をまきちらしているかもしれない。 くれぐれも気をつけます。
ハタチやそこらの若者ならば、人を好きになったら自分を好きになってもらって相思相愛になり、手をつないでキスして抱き合えたら、このうえもなく幸せだろう。 それは動物の本能と生理にのっとった、自然な行動でもある。 川をのぼってきたサケは産卵を終えて死に、30歳をすぎても結婚せず子を成さない女性は負け犬と呼ばれる。そういうものだ。負け犬なんて言い方は嫌いだけど、しかたがない。 しかたがないけれども、命がある限り、負け犬は負け犬なりに生きていくしかない。 それにサケと違って人間の世界は複雑だから、子を成したからといって死んじゃうわけにはいかない。「責任」ってものがあるからだ。 本書は40代なかばのサラリーマンを主人公とする短編5つを収録している。 (この長さだと「中編」? ごめんなさい、私は短編小説と中編小説の境界線をよく知らない) 5人の主人公は、みんな大手企業の課長さんである。責任がある。部下がいて上司がいる。奥さんと子供がいる。子供の進学問題をどうしようか。そろそろ年老いてきた両親のことも気になる。いろいろなものを背負って生きている。 そんなところへ、若くて独身で頭が良くて性格が良くて見た目も可愛らしい女性が、人事異動で自分の部下になっちゃったら。その女性がモロに好みのタイプで、好きになっちゃったら。 好きになったら行くとこまで行けよ――と思いますか? 妻子があるのに若い女の子を好きになるなんて不潔よ、不倫よ、訴えてやる――と思いますか? 話はそんなに単純ではない。 表題作『マドンナ』の主人公の荻野課長は、部下の知美ちゃんを好きになってしまい、そんな自分の気持ちに激しく困惑するのである。 愛人にする気はないが、肌に触れたいというスケベ心もなくはない。ただお茶を飲んで話しても満足はできないだろう。とはいえ、今の妻と別れて知美と再婚して――といった強い気持ちはない。 あるテレビ番組で、 「恋におちるのは、事故に遭うのと同じことよね」と語ったのはピーターだったかなぁ。 まさに荻野課長は事故に遭ったかのように恋をして、その気持ちを知美には告げず、ひたすら胸の底に押しこめている。 優柔不断と言えばそうかもしれないが、なにをどう決断すれば荻野課長の気持ちはスカッと晴れるというのか。こみあげてくる本能のままに知美を押し倒したら荻野課長は幸せになれるのか。 20代の若造と、いろいろなものを背負った40代のサラリーマンは、そこが違うのである。 これはもう、台風が通過するのを待つのと同じで、知美への気持ちが鎮まるのを待つしかない。 しかし知美の存在が気になって仕方がない。知美に恋人はいないのか。独身の若手社員が知美を口説き落としたらどうしよう―― そんな荻野課長の不安定な日々が、あるとき急に幕を閉じる。 なんだか笑っちゃうような、切ないような、それでいて爽快感のある結末。 ほかの4編は恋愛がらみではないが、どれも切なさと笑いが絶妙にブレンドされた作品である。 30代以上の大人の皆様にお勧め。 20代の若者が読むのは自由だが、5人の課長さんたちの心情を理解できるかどうかは別の話。
お見合いパーティーに参加したことがある。 参加者は真面目な人もいたが、たぶん下心ありありの殿方もいただろう。いわゆる「サクラ」の女性がいたかどうか、そこまでは知らない。私はサクラではない。一般の参加者である。 真面目であることと、異性に好感を持たれることは、まったく別の話だ。 真面目な人ほど、「なぜボクに彼女ができないのだろう」という悩みは深い。しかし、その答えが「ボク」自身の中にあるとは思っていないらしい。 お見合いパーティーなのに、女性に話しかけず、ずっと男性どうしで話している人がいた。たまたま私は近くにいたので、好奇心で話しかけてしまった。 するとその人は「ボクには女性に話しかける勇気がないんです」と言う。 お気の毒ですけど、私は人助けのためにお見合いパーティーに来たんじゃないわ。あなたも自分で望んでここに来たんでしょう。勇気とかなんとかの話じゃないの。あなたの人生を生きるのは、あなた自身なのよ。だれも助けてくれないのよ!――とは言わなかった。さすがに場所柄を考えて、控えた。 また、ちょっとカッコいいな、と思って話してみると、公務員という安定志向の最高峰にある仕事をしているのに「オレは安定志向じゃない」と言う人がいた。完全に矛盾している。もう少し話を聞くと、どうも親子関係に問題があるようだが、ご本人の自覚は薄かった。 とはいえ、さすがに面と向かって「問題ありますよね」とは言えない。でも小説のネタにはなりそうな気がした(それも失礼な話だ)。帰宅後、本気でワープロ(まだパソコンがなかったころだ)の電源を入れたほどだ。 それから、「オレもお見合いパーティーの主催者になろうかな。儲かりそうだろ」と言う人もいて、これも小説のネタになりそうだが、カネのことばかり考えてる男では、交際するとなると問題がある。 奥田英朗の小説【真夜中のマーチ】に出てくる「健司」という25歳のニイチャンは、「カネや女への欲望に忠実」という点では徹底している。はなからパーティーの参加者にはならない。大学時代からイベントやパーティーを手がける会社を経営している。ただし、この会社のお見合いパーティーに参加する女性たちは、健司が手配したサクラだ。 人として問題はあるが、とにかくカネがあるから女が寄ってくる。ポルシェも買える。 ある日のパーティーに、大企業の御曹司らしき「三田総一郎」という男がやってきた。健司にとってはカモだ。健司はヤクザを使って三田からカネを搾り取ろうと画策する。 女やカネには不自由しなさそうな御曹司が、なぜお見合いパーティーに……と思うが、実はこの三田という男にも、いろいろと問題があった。 健司と三田の奇妙な人間関係に、これまた問題がありそうな「千恵」という女が絡んでくる。 この3人がそれぞれに問題を抱えたまま、さらに大きな問題に飛び込む。ヤクザに睨まれ、謎の中国人に追われ、いかにも小説らしい派手で爽快なラストシーンがある。読後感がいい。 ただ、3人の個別の問題が完全に消滅したかというと、そうでもない。 本当に自分の望みどおりに問題が解決するのは1人だけで、あとの2人は「納まるところに納まった」という感じ。 考えてみれば、まったく問題のない人間など、この世にいるはずがないし、問題が小説のようにスカッと解決することも少ない。 問題があったら、真正面から立ち向かうか、ひらきなおっちゃうか、道は2つに1つだ。 私がお見合いパーティーで出会った人々が今ごろどうしているかは知らないが、立ち向かうなり、ひらきなおるなりして、幸せに生きていてくれればいいなと思う。 奥田英朗【真夜中のマーチ】 集英社 1575円

小難しいところのないコメディタッチの作品である。 日本テレビの2時間ドラマに良さそう。 奥田英朗作品の重要なキャラクターである「伊良部医師」は、この小説には登場しないが、ドラマ化するなら、お見合いパーティーの場面にゲスト的に出てくると面白いかも。 ぱんどらの妄想キャスト案は以下の通り。 ゲストの「伊良部医師」には、南海キャンディーズの山ちゃん。  ヤクザの卵でイベント会社経営者の「健司」には、塚本高史。  アイビールックとビートルズをこよなく愛する「三田総一郎」には、浅利陽介。  気が強くて美人の「千恵」には、山田優。  「健司」役には、加藤雅也をあてて関西弁でまくしたててもらおうか、とか、意外なところで羽賀研二はどうだ、とか考えたんだけど。 よくよく本を読んでみたら、健司と総一郎と千恵は「25歳」ということだったので、若手の皆さんをそろえてみました。 奥田英朗【真夜中のマーチ】 集英社 1575円

なんだか体調が悪くて、総合病院へ行ったら、医者が「一度うちの神経科に行ってみませんか? ちょっと変わった先生ですが慣れればどうってことないですから」と言い、ひきつった笑いを浮かべて目を合わせようとしなかったら、 変わった先生って、どんな先生だよ!とツッコミたくなるに違いない。こんなオープニングで完全につかまれて、短時間で一気に読み終えた。 この本には5つの短編小説がおさめられていて、5つとも、少しだけ心を病んだ人たちが登場する。 プール依存症の人とか、ひどい妄想癖のある人とか、携帯電話中毒の高校生とか、強迫神経症とか。殿方の下半身のお悩みなんてのもある。 なかでも、強迫神経症で悩む人には共感をおぼえた。私もそういう傾向が少しあるから……。 外出するとき、「ガスの元栓しめたっけ?」とか「窓をあけっぱなしにしてきたかも!」とか「ストーブ消したか!?」とか、やたら気になる。 「うわー火事になったらどうしよう!」なんて妄想が広がる。 家に戻って確認したりして。でも、ちゃんと元栓も窓も閉めてあるし、ストーブも消してある。 まぁ社会生活に支障をきたすほどではないので、私は病院に行ったことはないけど。 私の話はともかく、この小説に登場する強迫神経症患者は病院に出かける。 すると、伊良部総合病院神経科の伊良部医師に、「どうせ強迫神経症に特効薬はないんだもん。いっそ出かけるときは部屋に水を撒いてみるとか。あはは」と軽く笑い飛ばされてしまう。 「これでも医者かよ」と患者は思うが、伊良部医師の人柄を知るうちに、「こいつのほうが私より何倍も変人だ!」と気づく。 しかも伊良部は自分が変わり者であることを、あんまり自覚していない。変わり者だから友達もいないようだし、家庭生活にも問題があるのに、自分に問題があるとは少しも思っていないのだ。 「こういう医師がどんな治療をするんだよ!?」とお思いのかたは、ぜひ本書をお読みいただきたい。 忙しい現代人は誰しも、多かれ少なかれ、ストレスやら精神的な問題やらを抱えている。 そのせいか「癒されたい」とか「癒し系」といった言葉が日常語としてすっかり定着してしまったようだ。 でも、たとえ精神的な問題があるとしても、世間に迷惑をかけない程度であれば、無理に「癒そう」とするより、「心の問題まで含めて私自身だもんね」と開き直ってしまうほうが、ずっと楽に生きていけるのかもしれない。
12月28日に読み始めて、1月9日に読了。 ぱんどらさん、読み終わるのに10日以上かかってんじゃないかよー。 あ……いえ、28日に少し読んで、しばらく放置したまま他の本を読んでいたもので。 ぶ厚いけれども、すごく面白いし、スピード感がある小説なので、その気になれば1日で読みきれると思う。 面白いけれども、この中に出てくる過激なお父さんが私の父親だったら、すごくイヤだな。 若いころにいろいろと過激な活動をしてた伝説の人物である。いまは過激な組織から離れたことになっているのに、まぁ「伝説の人物」だもんだから、その方面の人々が、お父さんのもとにチラホラと訪ねてくる。 過激な組織を離れても、お父さんの過激な考えかたはそのままなので、何かにつけて周囲の人々と揉め事を起こしやすい。 年金保険料を払わない。息子の修学旅行代が高いといって学校に乗り込んでいく。 お母さんのほうは、変わり者のお父さんのフォローで気を使うことが多い。 そういうのを見ている息子の二郎は、「こんなお父さんは嫌いだ」と思うが、小学6年生だから家出したって生活力がない。 家の外では、不良中学生に目をつけられてお金を巻き上げられそうになるし。Hなことに興味が出てくる年頃で、なんとなくモヤモヤした気分があったり。二郎の悩みは尽きない。 しかしお父さんには相談できず、そうなると自力で解決するしか道はない。 二郎が不良中学生と決着をつける場面は、なかなか爽快。 さて、東京に住んでいた二郎たちは、ある事件をきっかけに西表島へ移住する。 お父さんは狭苦しい東京を脱して、俄然イキイキしてくる。しかし、お父さんにまつわる「伝説」が、この家族をますます厄介な状況に追い込んでいくことになる。 前半では「すごくイヤだ」と感じたお父さんが、後半ではだんだんカッコよく見えてくる。 現代社会にはまったく適合していないが、ふつうの大人たちが「自分の立場を守るために」隠していることを、このお父さんは暴いてみせる。 ラストシーンでは壮大なロマンさえ感じてしまう。
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